鮫島コラム

産業交流展2025に出展して見えた“リアルな相談現場”と診断士ネットワークの力

2025年11月26日(水)~28日(金)、東京ビッグサイトで開催された「産業交流展2025」に、東京都中小企業診断士協会の渉外部と国際部が共同でブースを出展しました。私は展示パネル制作のディレクションと進行管理を担当し、会期中は事務局兼説明員として来場者対応にあたりました。

制作した展示パネルでは、中小企業の海外展開支援やインバウンド支援、専門家派遣といった国際部の活動内容をわかりやすく整理し、来場者の目に留まりやすい構成にしました。内容をシンプルに伝えるデザインは、やはり展示会では大きな効果があると実感しました。

■ 多様な相談が舞い込む展示会の現場

実際にブースに立ってみると、相談の幅広さと奥行きにあらためて気づかされました。

事前資料では「海外展開に興味があるが、何から着手すべきかわからない」という入口段階の相談が多いとありましたが、実際にはより具体的で、多様な相談が相次ぎました。

その中でも、私が対応した2件は展示会ならではの特徴を象徴するものでした。

■【相談事例①】海外大手メーカーとのマッチングを希望する、ある事業者からの相談

ある事業者から、海外(南アジア地域)で大規模製造事業を展開する企業との協業に関する相談が寄せられました。

相談者が関係する海外企業は:

  • 金属加工・プラスチック・基板実装など多様な製造を行う
  • 同国企業として初めて 蓄電池セル量産に成功
  • 十数拠点の工場、数千名規模の従業員
  • 日本企業の現地進出支援(マッチング事業)にも力を入れている

という成長著しい企業で、「現地で協業可能な日本企業を紹介してほしい」という依頼でした。

■ 海外ビジネスの専門家としての対応

私は会社員時代、執行役員グローバル事業部長として海外子会社・関連会社のマネジメントを担当し、
独立後はコンサルタントとして、医療機関の国際展開支援や海外患者受入れ体制の構築を行ってきました。

これらの経験から、海外展開において重要となる

  • パートナー選定
  • 現地事業の立ち上げリスク
  • 事業文化の違い
  • 情報の非対称性

といったポイントを踏まえたアドバイスを行い、まずは企業情報を共有いただいたうえで、適切な専門家・企業との連携の可能性を検討することを提案しました。

展示会の場だからこそ出会える、ダイナミックで可能性の大きい相談でした。

■【相談事例②】“環境経営セミナー”講師派遣の相談(公的団体)

もう一つの相談は、環境・省エネ関連の支援事業を行う公的団体からのものでした。

主な相談内容は次の通りです:

  • 行政委託による省エネ診断・レポーティング事業を実施
  • 省エネ・環境経営に関するセミナー講師派遣も運営
  • 2026年2月に区内中小企業向け「環境経営セミナー」を開催予定(30〜40名規模)
  • 環境経営の専門性を有する中小企業診断士を紹介してほしい
  • 行政との打合せ後、詳細が固まり次第連絡予定

私は、診断士ネットワークには環境経営に強いメンバーが多数いるため、
適任者をご紹介できる旨をお伝えし、詳細連絡をお願いしました。

中小企業における脱炭素経営の重要性が増すなか、このような相談は今後さらに増えると予想され、協会としての役割の広がりを実感しました。

■ 2件の相談から強く感じた“診断士ネットワーク”の力

今回の産業交流展を通じて最も強く感じたのは、
診断士は多様な専門性をつなぐ“ハブ”として機能できる
という点です。

海外ビジネス、技術系企業、公的団体、専門家派遣など、
幅広い領域の相談が一つの場に集まるからこそ、

  • 自分の専門性を活かしながら、
  • 専門性の異なる診断士の力も引き出し、
  • 相談者に最適な支援につなぐ

という、診断士の本質的な価値を発揮できる場となりました。

相談後には満足度確認・次回相談の意向・連絡先取得といったルールがあり、
フォローアップにつながる非常に優れた仕組みであると感じました。

■ 終わりに:展示会を起点に広がる支援の可能性

展示パネル制作から相談対応まで幅広く関わった今回の産業交流展は、
私自身の専門性(グローバル事業 × 国際展開支援 × 中小企業支援)を改めて活かす機会となりました。

海外企業とのマッチング案件、公的団体からの講師派遣相談など、
展示会ならではの“新しい出会い”がいくつも生まれ、
中小企業支援に対する視野がさらに広がったと感じています。

今後も、海外事業の経験と診断士ネットワークを最大限に活用し、
中小企業の成長と挑戦を支援していきたいと思います。