鮫島コラム

海外出張は何が起きるかわからない②

※前回のコラム(第1回:フライト遅延とTGV乗り遅れ)はこちらをご覧ください。

フランスで救急車に乗る

得意先との打合せは順調に進んでいました。
しかし、その日の夜、思いもよらない出来事が起きました。

その日の夜、我々は得意先とともにディジョンの有名レストラン「シャポー・ルージュ」で会食をしていました。

その時です。

同行していたエンジニアが「トイレに行きたい」と言って席を立ち、数歩歩いたところで突然倒れてしまいました。

レストランは騒然となりました。

スタッフが彼を空いている個室へ運び込み、横にして休ませましたが、回復する様子がありません。そこで救急車を呼ぶことになりました。

私は彼とともに救急車に乗り、病院へ向かいました。
フランスで救急車に乗ることになるとは、まったく想像もしていませんでした。

病院に到着すると、彼は担架で運び込まれました。

しかし、すぐに診察が始まるわけではありませんでした。

まず通されたのは、いわば野戦病院のようなスペースでした。

簡易ベッドがいくつも並び、そこに患者が次々と運び込まれてきます。彼もそのベッドで順番を待つことになりました。

私はその横で様子を見守るしかありませんでした。

異国の病院で状況もよく分からないまま、時間だけが過ぎていきます。

その間、私の頭の中ではさまざまな思いが巡っていました。

「彼を日本に無事に連れて帰れるのだろうか」
「もし容体が悪化したらどうするべきか」
「いざとなれば、日本大使館に連絡するべきだろうか」

海外で部下を預かる責任の重さを、その時改めて強く感じました。

しばらくして英語が達者なナースが現れ、私はほっとしました。

ようやく意思疎通ができる相手が現れたからです。

それでも診察までに3~4時間ほど待たされました。

その後、英語が流暢な当直医が現れ、ようやく診察が始まりました。

ドクターは聴診器を当てたり、首のリンパ腺を触診したりしながら質問しました。

「何か薬を飲んでいますか」

彼は日本から持ってきた市販の風邪薬を飲んでいました。しかし商品名は伝えられても、その成分までは説明できません。

結局カルテには

「Japanese Medicine」

と書かれることになりました。

海外で医療を受けることの難しさを実感した出来事でした。

(第3回へ続く)