鮫島コラム

海外出張は何が起きるかわからない③

※前回のコラム(第2回:フランスで救急車に乗る)はこちらをご覧ください。

プロフェッショナルの仕事

先ほどまでのことが嘘のように、彼の体調は次第に回復してきました。

本人は「もう大丈夫です。ホテルに帰りましょう」と言いましたが、ドクターはすぐには許可しませんでした。

医師としては、原因がはっきりしないまま患者を帰すわけにはいかなかったのでしょう。

その後もしばらく経過観察が続き、ようやく帰ってよいという判断が出ました。

ホテルに戻ったのは明け方近くでした。

翌日に予定されていたクレームの原因となった技術検証は午後からに変更されました。我々は午前中ゆっくり休んだ後、得意先の工場へ向かいました。

ディジョンの工場はセキュリティが非常に厳しく、入門する際にはパスポートを預ける必要がありました。身元確認のためです。

異国の工場でパスポートを預けるというのは、やはり少し緊張するものです。

そして技術検証が始まりました。

前夜は救急搬送されるという出来事がありましたが、同行していたエンジニアはすっかり体調を取り戻していました。

ここから彼は本領を発揮しました。

今回クレームとなっていた原因について、測定データや数値をもとにロジカルに説明し、さらに具体的な対策案まで提示しました。

得意先の技術陣も納得している様子でした。

議論は落ち着いた雰囲気で進み、クレーム処理は無事に終わりました。

工場を退出する際、預けていたパスポートが返却されました。

その瞬間、私はようやく本当に安心しました。
異国の地での緊張が、すっとほどけたような気がしました。

こうして大きなミッションを一つ終えることができました。

張り詰めていた緊張が解けたその日の夜、得意先が「シャポー・ルージュよりもっとおいしい店がある」と言って食事に誘ってくれました。

レストランへ向かう前に、ディジョン・マスタードで有名なマイユの本店へ案内してくれました。日本への良いお土産を買うことができました。

レストランの料理は素晴らしく、前日の出来事が嘘のように和やかな会食となりました。

同行していたエンジニアもすっかり元気を取り戻し、食事と会話を楽しんでいました。

(第4回:無事に日本へ連れて帰る)へ続く