鮫島コラム

経営管理ビザで見られる「事業の実態」とは何か

― 書類ではなく、経営そのものが審査される時代へ ―

▶ 前回コラム

「経営管理ビザの事業計画書は『通すため』に書いてはいけない」

前回は、事業計画書は「ビザを取得するための書類」ではなく、「事業の実態を正しく伝えるための書類」であることについてお話ししました。

では、その「事業の実態」とは何を指すのでしょうか。

経営管理ビザに関するご相談を受けていると、

「オフィスを借りれば大丈夫でしょうか」

「資本金3,000万円など制度上の要件を満たしていれば十分でしょうか」

といったご質問をいただくことがあります。

もちろん、それらは重要な要素です。

しかし、現在の審査では、それだけで十分とは言えません。

入管当局が確認しようとしているのは、

「本当に日本で事業が営まれているのか」

という点だからです。

書類だけでは見えないもの

事業計画書や決算書は、事業を理解するうえで重要な資料です。

しかし、それだけでは事業の全体像は見えてきません。

例えば、

・誰がどのように事業を運営しているのか

・顧客はどのような人たちなのか

・サービスはどのように提供されているのか

・収益はどのような仕組みで生まれているのか

・経営者自身がどのように経営へ関与しているのか

こうした点を総合的に確認して初めて、

「実態のある事業」

であることが理解できます。

つまり、

事業の実態とは、書類の束ではなく、日々の経営活動そのものなのです。

私が現地確認を重視する理由

私は経営管理ビザに関する事業計画書の確認業務では、可能な限り現地を訪問するようにしています。

現場へ足を運ぶことで、

オフィスや店舗の様子、

従業員の働き方、

設備の状況、

サービスの提供状況など、

書類だけでは分からない多くの情報を得ることができます。

私は会社員時代、海外M&AやPMIに長年携わってきました。

その中で徹底して学んだのが、

「現場・現物・現実」

を確認することの重要性です。

経営管理ビザの支援でも、その姿勢は変わりません。

現場でしか確認できないこと

以前、宿泊事業を営む外国人経営者の支援で、宿泊施設を訪問したことがありました。

その施設へ向かう途中、駅の方向へ歩いている外国人の家族連れを見かけました。

そこで英語で声を掛け、

「この近くの宿泊施設をご利用ですか。」

「この施設はどのように見つけたのですか。」

と尋ねました。

すると、そのご家族は実際にその宿泊施設へ宿泊しており、オンライン旅行予約サイト(OTA)を利用して予約したことが分かりました。

事前に経営者からは、

宿泊客はアジアだけでなく欧米など幅広い地域から訪れていること、

そしてOTAを活用した集客が順調に機能していることを伺っていました。

現場で宿泊客から直接お話を伺ったことで、

・実際に外国人旅行者が利用していること

・幅広い国・地域から宿泊客を集めていること

・OTAを通じた集客が実際に成果を上げていること

を確認することができました。

もちろん、一組のお客様へのヒアリングだけで顧客構成全体を判断することはできません。

しかし、

経営者へのヒアリング、

事業計画書、

財務資料、

予約状況、

そして現場で確認した事実が互いに整合していることで、

私はその事業の実態に対する確信をさらに深めることができました。

これは、書類だけを読んでいては決して得られない情報です。

経営者との対話から見えてくるもの

現場を見ることと同じくらい重要なのが、経営者との対話です。

なぜ日本で起業したのか。

なぜこの事業を選んだのか。

どのような価値を社会へ提供したいのか。

将来どのような会社を目指しているのか。

こうした話は、事業計画書だけでは十分に伝わりません。

一方、実際に経営者と向き合って話をすると、

事業への理解、

市場に対する認識、

そして経営者としての覚悟が自然と伝わってきます。

もちろん、理念だけで事業は成り立ちません。

しかし、

理念と現実が一致している経営者の事業には、一貫性があります。

私は、その一貫性を非常に重視しています。

「実態確認」は入管だけではない

事業の実態が重視されるのは、経営管理ビザだけではありません。

実は私自身も最近、Googleビジネスプロフィールのオーナー確認において、ビデオ通話による事業実態の確認を受けました。

その際には、

事業者名を確認できる資料、

事業に関係する書類、

公式Webサイト、

お問い合わせフォームなど、

実際に事業を行っていることを示す情報の提示を求められました。

形式的に登録するだけではなく、

「本当にその事業者が存在し、事業を営んでいるのか」

が確認されたのです。

Googleビジネスプロフィールと経営管理ビザでは制度も目的も異なります。

しかし共通しているのは、

形式ではなく実態を確認する

という考え方です。

行政機関だけでなく、民間のプラットフォームにおいても、事業の実在性や継続的な活動を確認する流れが強まっていることを実感しました。

「実態」は更新審査でも問われる

経営管理ビザは、取得できれば終わりではありません。

更新時にも、

・事業が継続しているか

・売上はどのように推移しているか

・経営者自身が主体的に事業を運営しているか

といった点が確認されます。

つまり、

取得時だけ実態を整えるという考え方では通用しません。

日頃から誠実に事業を運営し、

その内容を第三者へ説明できる状態にしておくことが重要なのです。

私が支援をお引き受けする判断基準

私は、事業計画書の確認書を発行する際、

「この事業は本当に日本社会へ価値を提供しているか」

という点も大切にしています。

売上規模だけではありません。

地域経済への貢献、

雇用、

顧客への価値提供、

そして経営者自身が真摯に事業へ向き合っているか。

そうした点を総合的に判断したうえで、支援をお引き受けしています。

だからこそ、

形式だけを整えたいというご相談については、お引き受けしていません。

一方で、

日本で本気で事業を育てたいという経営者に対しては、

できる限り力になりたいと考えています。

おわりに

経営管理ビザの審査は、年々「実態」を重視する方向へ進んでいます。

重要なのは、

書類をきれいに作ることではありません。

実際に行っている事業を、

論理的かつ客観的に説明できることです。

その意味で、事業計画書は単なる申請書類ではなく、

経営そのものを映し出す鏡と言えるでしょう。

私は今後も、制度の趣旨を踏まえながら、事業の実態を正しく評価し、日本社会に貢献しようとする外国人起業家の挑戦を支援していきたいと考えています。

▶ 次回コラム

「経営管理ビザの事業計画書で『数字の根拠』はどう示すべきか(仮題)」

売上予測や利益計画は、どのような考え方で作成すれば説得力が生まれるのでしょうか。

実際の支援経験をもとに、数字の整合性や根拠の示し方について解説します。

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「経営管理ビザの事業計画書で、なぜ多くの経営者が悩むのか ― 実際の支援現場から見えた課題と対応のポイント ―」

「経営管理ビザの事業計画書は『通すため』に書いてはいけない ― 事業の実態を正しく伝えることが成功への近道 ―」

筆者プロフィール

鮫島 創(中小企業診断士)

シャーク・コンサルティング代表。

海外PMI(M&A後統合)、海外ガバナンス、医療インバウンド支援を専門分野とする経営コンサルタント。

事業会社では執行役員グローバル事業部長を務め、中国(上海)および香港への駐在経験を有する。

現在は、外国人経営者の経営管理ビザ・高度専門職ビザに関する事業計画書確認・評価業務にも取り組んでいる。

海外事業経験を活かし、外国人経営者とのコミュニケーションにも対応している。