鮫島コラム

香港四大トレイル踏破記

マクリホーストレイル③
山と海が織りなす香港の原風景 ― 急登の先に広がる西貢半島の絶景 ―

はじめに

香港四大トレイルの中で最も長い全長100kmのマクリホーストレイル。

前回は、浪茄湾(Long Ke Wan)や西湾(Sai Wan)など、香港とは思えないほど美しい海岸線をご紹介しました。

▶ 関連コラム:
「マクリホーストレイル② ― エメラルドグリーンの海と秘境の村を歩く ―」

エメラルドグリーンの海、白い砂浜、そして今も残る小さな村。

そこには、金融都市として知られる香港とは全く異なる姿がありました。

今回は、マクリホーストレイル・セクション3を歩きます。

距離は約10km。

数字だけを見ると短い区間ですが、実際に歩いてみると、急な登りと下りが続く、非常に歩き応えのあるコースでした。

海から山へ ― 表情を変えるマクリホーストレイル

セクション1、2では、西貢半島の美しい海岸線が主役でした。

しかし、セクション3に入ると景色は大きく変わります。

歩き始めて待っていたのは、急勾配の山道。

いきなり呼吸が上がります。

3日前にセクション2を歩いたばかりでしたが、この日はまた違った厳しさがありました。

香港というと、多くの人が思い浮かべるのは、高層ビル、地下鉄、ショッピングモールではないでしょうか。

しかし、一歩山へ入ると、その印象は大きく変わります。

香港は「山と海」の都市

香港は平らな土地に広がった都市ではありません。

険しい山と海のわずかな隙間に、人々が暮らす場所を作ってきた都市です。

だからこそ住宅は高層化し、地下鉄網は発達し、限られた土地を最大限活用する独特の都市構造が生まれました。

山の上まで登ると、その理由がよく分かります。

眼下には入り組んだ海岸線。

遠くには大小さまざまな島々。

香港という都市の成り立ちを、地図ではなく自分の足で理解できる瞬間です。

亜熱帯の森と香港市民の休日

山頂からの景色だけが、香港トレイルの魅力ではありません。

しばらく歩くと、道は緑深い森の中へ入っていきます。

強い日差しを遮る木陰。

鳥の声。

風の音。

ここが人口700万人を超える大都市・香港であることを忘れてしまいます。

また、香港ではトレイルが特別な趣味ではなく、市民生活の一部になっています。

週末になると、多くの人が山へ入り、ハイキングやキャンプを楽しみます。

都市と自然の距離が近いこと。

これも香港の大きな魅力です。

雞公山(Kai Kung Shan)へ

アップダウンを繰り返しながら、雞公山(Kai Kung Shan)へ向かいます。

標高は399m。

数字だけを見ると決して高い山ではありません。

しかし、海抜近くから登る香港の山は、標高以上に厳しく感じます。

強い日差しの中、登りと下りを繰り返す道。

日本の5月頃を思わせる紫外線で、一気に日焼けしました。

おわりに

マクリホーストレイル・セクション3。

歩いた距離は約10km、時間にして2時間42分。

数字だけを見れば短いコースです。

しかし、急なアップダウンを越えながら歩いた充実感は、距離以上のものがありました。

高層ビルの香港。

金融都市としての香港。

それだけではない香港の姿が、ここにはあります。

山があり、海があり、森があり、そこに人々の暮らしがあります。

そして歩いている途中、偶然一羽の蝶が写真に写りました。

香港は、歩けば歩くほど新しい表情を見せてくれる街です。

次回は、マクリホーストレイルのセクション4・5へ進みます。

「天空回廊(Sky Corridor)」と呼ばれる尾根道からは、西貢半島の山々や入り組んだ海岸線を一望できます。

そこから見えたのは、美しい景色だけではありません。

山と海の間に都市を築いてきた香港という街の姿を、改めて実感する一日となりました。

▶ 関連コラム:
「マクリホーストレイル④ ― 天空回廊から望む香港(仮) ―」