ウィルソントレイル①――わずか4kmの難コース、急坂の先に広がる絶景
香港のハイキングシーズンが始まった
2021年11月14日。香港もようやく涼しくなり、ハイキングに適した季節がやってきました。
香港には「四大トレイル」と呼ばれる長距離ハイキングコースがあります。香港トレイル、マクリホーストレイル、ウィルソントレイル、ランタオトレイルです。
今回挑戦したのは、香港島南部のスタンレー(赤柱)付近から始まるウィルソントレイル(Wilson Trail)のステージ1です。
ガイドブックによれば、距離はわずか4km余り。しかし、難度を示す星は3つ付いていました。
「こんなに短いのに、なぜ難コースなのだろう?」
その理由は、歩き始めてすぐにわかりました。

ウィルソントレイルの起点を示す石碑

スタンレー方面から北上するステージ1の歩行ルート
登り始めて間もなく振り返ると、スタンレー方面の青い海と住宅地が眼下に広がっていました。
香港島南部らしい美しい景色です。しかし、その眺めを楽しむ余裕も束の間。ここからさらに厳しい登りが続きます。

山の中腹から望む香港島南部の海と住宅地
いきなり始まる急登――500mが遠い
スタート直後から、いきなり急な上り坂が続きます。
香港のトレイルには500mごとに距離標が設置されていますが、次のポストがなかなか現れません。
しかも、コースは南側の斜面。11月とはいえ日差しは強く、木陰もほとんどありません。
この日は、うかつにもジーンズで歩き始めてしまいました。汗が止めどなく噴き出してきます。
気温は23℃ほどでしたが、直射日光を浴びながらの急登は想像以上に厳しいものでした。
わずか1km進んだところで、早くも休憩することにしました。

500mごとに設置された距離標
山道で出会った二人の日本語話者
1km地点で休憩していると、外国人のハイカーから突然、日本語で話しかけられました。
少し驚きましたが、その後は英語で会話を交わしました。
ここはスタンレーから登ってきた最初のピークで、まだこの先に3つのピークがあるとのこと。
「まだ3つもあるのか……」
先の長さを思い知らされました。
さらに、別の若い女性からも「日本の方ですか?」と声をかけられました。
あまりに自然な日本語だったので尋ねてみると、練馬区出身の日本人女性でした。香港の金融機関に現地採用で勤務し、すでに3年ほど暮らしているとのことでした。
私自身、上海や香港で海外勤務を経験してきましたが、異国の地で自分のキャリアを切り拓こうとしている若い人の姿には、いつも刺激を受けます。
厳しい山道の途中でしたが、思いがけない出会いに元気をもらいました。
急な下り坂、そして再び登り返す
最初のピークを越えると、今度は急な下り坂です。
登りでは息が上がりましたが、下りでは太ももの前側、大腿四頭筋に大きな負担がかかります。
ようやく下りきると、小さな橋がありました。
近くのベンチで腰を下ろし、持参したおにぎりを食べてエネルギーを補給します。
約30分休憩してから、再び歩き始めました。
しかし、ここからまた急な上り坂が待っていました。
幸い、こちらの斜面は比較的木陰が多く、先ほどまでの直射日光にさらされる登りよりは、いくらか楽に感じられました。

急な下り坂を越えた先の休憩地点付近

短い距離に凝縮された大きな標高変化
記録を振り返ると、短い距離の中で大きなアップダウンを繰り返していたことがよくわかります。
歩行距離は4.75km、移動時間は1時間43分26秒。Garminによる総上昇量は628mでした。
距離だけでは、山道の厳しさは測れないものです。
苦労の先に広がる香港の絶景
再び高度を上げていくと、視界が大きく開けてきました。
眼下にはタイタム貯水池(大潭水塘)。緑に覆われた山々の間を縫うように、水面が広がっています。

緑の山々に囲まれたタイタム貯水池(大潭水塘)
さらに視線を移すと、青い海と入り組んだ海岸線、そして遠くには高層ビルが立ち並ぶ香港の市街地が見えます。
緑豊かな山々と世界有数の大都市が、すぐ隣に存在している。これこそ、香港のハイキングの大きな魅力です。
香港といえば、超高層ビルが立ち並ぶ金融都市を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、実際には市街地からそれほど遠くない場所に、こうした豊かな自然が残されています。
山を歩くたびに、香港という都市の奥深さを感じます。
陽明山荘へ――短いけれど手ごわいステージ1
アップダウンを繰り返しながら、ようやくステージ1の終点、陽明山荘(Hong Kong Parkview)付近に到着しました。
ガイドブックで見た4km余りという数字からは想像できない、なかなか手ごわいコースでした。
しかし、厳しい登りの先には素晴らしい眺望があり、山道では思いがけない人との出会いもありました。

自然と都市が隣り合う香港ならではの景色
この日は、さらにハッピーバレー(跑馬地)まで歩いて下り、トラムに乗って帰宅しました。
香港の山を歩き、最後は街の中を走るトラムで家に帰る。
そんな一日の過ごし方も、香港ならではの楽しみでした。
歩いた距離の長さではなく、そこにどれだけ豊かな体験が詰まっているか。
ウィルソントレイルのステージ1は、そんなことを改めて感じさせてくれる山歩きでした。
今回のハイキング記録
- 歩行日: 2021年11月14日
- コース: ウィルソントレイル・ステージ1
- 距離: 4.75km(GPS記録)
- 移動時間: 1時間43分26秒
- 総上昇量: 628m(Garmin計測値)
- 主な見どころ: スタンレー方面の海、タイタム貯水池、香港の都市景観
次回
▶ ウィルソントレイル②――砂袋を背負って登る、ヴィクトリアハーバーの絶景
ウィルソントレイルのステージ2では、トレイルの維持管理に協力するため砂袋を背負って山を登ります。ジャーディンズルックアウトから望むヴィクトリアハーバーと香港の摩天楼は、まさに絶景でした。